プラハ城

プラハ城

チェコ共和国の首都プラハの丘上にそびえる城郭複合体で、9世紀末の創建以来ボヘミア王・神聖ローマ皇帝の居城として千年以上にわたり中欧政治の中心となってきた。ロマネスクからバロックまで多様な様式を含み、ギネスブックは世界最大の古城と認定する。現在はチェコ共和国大統領府が置かれている。

3行サマリ

  • 9世紀末創建、ボヘミア王と神聖ローマ皇帝の居城として千年以上機能した中欧最大級の城。
  • ロマネスク・ゴシック・ルネサンス・バロックが共存する千年の建築意匠の博物館的存在。
  • 現在はチェコ共和国大統領府が置かれ、プラハ歴史地区として世界遺産を構成している。

歴史

プラハ城は、チェコ共和国の首都プラハ中心部のフラチャヌィの丘に佇む城郭複合体で、9世紀末の創建から千年以上にわたり中欧の政治と文化の中心として機能してきた。築城をめぐっては、女王リブシェがこの丘から都市の繁栄を予言したとする伝説と、870年頃にプシェミスル朝の祖ボジヴォイ1世がキリスト教を受容して移座したとする史実とが混在して伝えられる。最初の城壁付建物は聖母マリア教会で、まもなく10世紀前半には聖イジー聖堂と聖ヴィート教会の前身バシリカが整い、ボヘミア最初の修道院も城内に開かれた。12世紀にはロマネスク様式の宮殿が築かれてボヘミア王城としての機能が確立し、13世紀にはオッタカル2世が王権の威信を示すために防御を大きく強化し王宮も整備した。 14世紀、ボヘミアの黄金時代を築いた神聖ローマ皇帝カール4世(ボヘミア王カレル1世)の治下で王宮はゴシック様式へ大改修され、城の防御も強化された。既存の聖ヴィート教会跡地には壮大なゴシック大聖堂の建設が始まり、ほぼ6世紀をかけて完成する長い道のりを歩み始める。15世紀末、フス戦争の混乱を経てウラースロー2世が再建を主導し、ベネディクト・レジェ設計の広大なヴラジスラフ・ホールが王宮に増築された。1541年の大火後はハプスブルク家治下でルネサンス様式の建築群が次々と加わり、フェルディナント1世は王妃アンナのために夏の離宮ベルヴェデーレを建てている。ルドルフ2世はプラハ城を主要居城とし、北翼にスペイン・ホールを設けて自身の膨大な美術コレクションを展示した。 1618年のプラハ窓外投擲事件は三十年戦争の引き金となり、戦乱でルドルフのコレクションは1648年のプラハの戦いでスウェーデン軍に略奪された。18世紀後半には女帝マリア・テレジアによる最後の大規模再建が行われ、城の南翼を中心にバロック・古典主義的なファサードに整えられた。1918年のチェコスロヴァキア独立とともにプラハ城は大統領府となり、初代大統領トマーシュ・マサリクの依頼でスロベニア出身の建築家ヨジェ・プレチニクが新王宮と庭園を近代的に修復し、聖ヴィート大聖堂は1929年に落成式を迎えた。第二次大戦下のナチス占領期にはラインハルト・ハイドリヒの本拠とされ、戦後の共産主義政権時代を経て1989年のビロード革命と1993年のチェコ共和国成立後は、同国大統領府として現在に至っている。

文化的意義

プラハ城は、ロマネスク・ゴシック・ルネサンス・バロックの各様式が一所に重層する稀有な事例として、ヨーロッパ建築史を一望できる文化財であり、旧市街・カレル橋とともにユネスコ世界遺産「プラハ歴史地区」を構成している。ボヘミア王・神聖ローマ皇帝・チェコスロヴァキア大統領・チェコ共和国大統領という千年以上にわたる統治者の連続的居住地として、中欧の政治と文化の象徴としての役割を担い続けてきた。ボヘミア王冠の保管地でもあり、ヨーロッパ中部のアイデンティティを伝える結節点でもある。

建築的特徴

プラハ城の敷地は東西約570メートル、平均幅約130メートルに及び、ギネスブックは世界最大の古城と認定する。中核となる聖ヴィート大聖堂は14世紀着工のフランス系ゴシック大聖堂で、マティアス・フォン・アラスとペーター・パルラーの設計に始まり、1929年に新ゴシック様式で全体が完成した。隣接する聖イジー聖堂は10世紀創建のボヘミア最古級ロマネスク教会で、双塔と内陣の彩色壁画が見どころとなる。旧王宮には15世紀末のヴラジスラフ・ホールがあり、ベネディクト・レジェの天井リブヴォールトは後期ゴシックの傑作と評される。ルドルフ2世期に増築されたスペイン・ホールはバロック装飾が華やかで、城の周囲には王宮庭園、鹿の堀、黄金小道など個性ある空間が連なる。中世から近代に至る建築意匠の博物館の様相を呈している。

訪問ガイド

プラハ城へはプラハ中心部のマラー・ストラナ地区から徒歩か、トラム22番でプラスキー・フラト停留所から数分でアクセスできる。城下町から城門へ続くネルドヴァ通りは石畳と歴史的建造物に彩られた人気の散歩道で、のぼり坂を含めて全行程30分ほどを見ておくとよい。城内の中庭・庭園は無料で散策できるが、聖ヴィート大聖堂・旧王宮・聖イジー聖堂・黄金小道などの主要内部見学には共通券が必要となる。全体を回るには半日から1日が目安。ベストシーズンは新緑から初秋にかけてで、城正門の儀仗兵交代式は毎正時に行われ、正午には音楽演奏付きの大規模なバージョンが楽しめる。最新の入場料・開門時間・展示替えは公式サイトで確認すること。

周辺スポット

プラハ城の南麓に広がるマラー・ストラナ地区には、17世紀のバロック建築の傑作シュテルンベルク宮殿や聖ミクラーシュ教会が並び立つ。城の東側ヴルタヴァ川には1357年に着工したカレル橋が架かり、30体の聖人彫刻と旧市街の眺望で知られる。さらに東岸の旧市街広場には旧市庁舎と天文時計、ティーン教会が密集し、プラハ歴史地区の中核を形成している。これらを城と組み合わせることで、中世から近代までのプラハの歴史を縦断する旅程が一日で組める。

現代における価値

プラハ城は、千年にわたり多様な王朝・体制・建築様式の交代を内包しながら一貫して国家の中枢としての役割を果たしてきた稀有な事例であり、現在もチェコ共和国大統領府として現役で機能している。観光地と政治機能が共存する城の在り方は、文化遺産を凍結保存ではなく使い続けることで保つというモデルを示し、ヨーロッパ中央アイデンティティの結節点としての象徴性を保ち続けている。訪問者は中欧史の重層を一日で体感することができる。

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